ADHD人が安全・安心して暮らすためのかんたんな考え方は、
「健常者に心地いい世界が、あなたには地獄かも」
ということを覚えておくことです。
健常者が心地よい世界が、発達障害者にとっては地獄であることが、よくあります。
また逆に、発達障害者にとって心地よい世界が、健常者にとっては地獄であることが多々あるのです。
私はよく思います。人は毎日ご飯を食べ、トイレに行きますね。ごはんがないと衰弱死してしまい、トイレがないとその辺で用を足さなければならない。ほとんどの人はそれらを毎日する必要があります。
つまり、食事とトイレが必要という「障害」を持っているのです。しかしその「障害」は、ほぼすべての人が持っているため、街には至る所に食堂とトイレがある、という「配慮」がなされているわけです。
発達障害者はどうでしょう。聴覚過敏の人がたくさんいます。人類の99%が聴覚過敏であれば、世の中はもっと静かであるという「配慮」がなされているはずです。
しかし、発達障害者はマイノリティ。マイノリティが快適であるように「配慮」されることは多くありません。
これが、発達障害者が世の中で生きづらい原因の大きな一つでしょう。街中にほとんど食堂とトイレがない世界で生きている状況なのです。
こう言うと、「そんな事言ってもどうしようもないじゃないか」と、聞こえてきそうです。
確かに普通の人として我慢しながら働くのは非常に大変です。
しかし人によりますが、できないことはありません。
うるさい環境では耳栓やイヤーマフをする、机にパーティーションなどで目隠しをする。最近ではコロナ禍で在宅勤務が増えているので、それで障害が一気に解決してしまった人もいるでしょう。
身体障害を例に出すと、数十年前は、世の中はほとんど健常者だけに最適化されていました。駅はバリアフリーでなく、障害者が立ち入ることすら困難。
しかし今、特に大都市の駅では、ほとんどがバリアフリー化されています。
発達障害に関しては、世間の理解が比較的遅れているため、未だに困難を抱えている人が非常に多いです。
会社で普通の人としてふるまい、配慮を得られず、なぜうまくい仕事ができないのか理解できないまま退職してゆき、活躍の場が得られない人が多かったでしょう。
こうして、発達障害に対する理解は徐々に広まっており、職場で耳栓やパーティーションなどの対策をしても、そこまでいぶかしがられないようになりつつあります。
自分に適した対策をする。それがどうしても許容されなければ、許容してくれる職場への転職や、開業といった方法もあるのです。
あなたの前にあるのは、今進んでいる道だけではありません。
様々な選択肢がある、ということを覚えておいてほしいです。