とにかく忙しい。人が足りない。余裕がない。
そのため、手元にある作業以外のことが考えられない。
目の前の作業でアップアップしてしまっており、将来のための基礎研究がおろそかになっていました。
私が入社したころにあった、基礎研究を専門とする部署は今はもうありません。
ミーティングを設定しても、全員時間通りに集まれることの方がまれでした。
特に中間管理職は常にデスクに不在であらゆる場所をかけまわり、用事がある職員はデスクにある「予約表」で、相当先のアポを取る始末でした。
またこのことから、他人とのコミュニケーションも薄くなってしまい、他人を思いやれない、想像力が働かないといったことにもつながり、ギスギスした場面も増えていきました。
有給はほぼ確実に取得でき、サービス残業もない、完全ホワイト企業。
反面、そのしわ寄せで業務が過密になり、勤務時間中の負荷が大変高いのです。
そういった中で、若手を中心に、優秀な人材がすぐにやめてしまう。
「お世話になりました」メールが来るのが日常になっていました。
元職場は社員教育が非常にしっかりしており、それ自体は大変いいことなのですが、これはあくまで長く働いてもらうことを前提とした習慣です。
社会人としてのノウハウを身に着けた時点で、
「あ、この会社ダメだ」
と出て行かれるのが非常に困るわけです。
逆に言うと、「元●●社員」という肩書と、社会人としてのノウハウを得ることができるため、将来のキャリアへのステップアップとしては、かなり都合が良い会社かもしれません。
黄金期の名残で、元職場に対するイメージは現在はまだ良好です。そういった意味ではおすすめできるかもしれません。
研修を終えた時点で見切りをつけてやめてしまう。
私の知り合いも含め、世間ではこういった話はよく聞きます。
大企業はそれでもしばらくは持ちこたえられますが、反面、素早い意思決定や方向転換も難しいものです。
そしてそもそも、元職場に限らずですが、日系自動車メーカー自体に将来性が感じられないというのもあるでしょう。
就職先を自由に選べる優秀な学生にとって、日系自動車メーカーが魅力的に映るかどうか。この点、30年前とは全く違う状況になっています。
一番フットワーク軽く研究ができているイメージなのがトヨタですが、時価総額ではテスラに軽く追い抜かれていることからも、大変厳しい状況であると言えるでしょう。
新しいことを始めるべきときなのに始められない。所帯が大きすぎて方向転換できない。それが日系自動車メーカー、そして私が見てきた元職場の現状です。