従業員の士気を鼓舞する目的か、年に数度「アイデア提案」を募集することがありました。
私はそのたびに色々と会社側に提案したのですが、全くいい顔はされず、すべてが却下されていきます。
そして邪推ではありますが、部署内でも面倒なやつと認識されるようになったのではないかと思います。
あるミーティングで、また「アイデア提案」の募集がありました。早速話しに行ったところ、
「あ~僕には言わないで」
と一言残し立ち去っていきました。
賢明な読者の方は簡単におわかりかもしれませんが、そもそも形だけの募集なのだと気づいた瞬間です。
また、年に一度、所内を上げてのレクリエーションイベントがありました。
それにあわせ、またしても「アイデア提案」の募集がありました。
そのときはいつもとは様子が違い、
「優秀案件は開発スタートすると会社に取り付けました!」
とのことでした。
想像ですが、イベント主催の(おそらく若くて活気のある)方が、なんとか会社に掛け合ったのだと思います。
そして、優秀案件のいくつかは開発が始まりました。
そして一年後、商品化せずに開発中止。
会社側もイキのいい社員の鬱憤を晴らすため、大変な苦労をしていると予想ができます。
このレクリエーションイベントというのも、聞きかじりですが過酷なものらしく、業務外にもかかわらず激務に耐えられず、自ら命を断った方もいると聞きました。
三菱電機は自殺者が連続し、ブラック企業アワードにまで認定され、ことあるごとにネタにされていますが、元職場でも同様に不幸は起きています。
他部署ですが、Fitの連続リコールが問題になったときは何人もの方が命を絶ったと聞きました。
なぜ元職場だけ世間の耳に入らないのかはわかりませんが、大企業、経団連、政界、マスコミ。これらへの貢献や根回しによるものなのでしょうか。
これに関しては完全に想像の域を出ないので、読者の皆さんは話半分として聞き流していただければと思います。
当時の伊東社長の強権的な社内政治は今日でも収益性の悪さを長引かせていますが、私は収益性が主な問題ではなく、やはり従業員のメンタルヘルスを損なった事。空気を大事にする割に社内全体を見ず、強権的に方針を打ち出しそれにやられた従業員が命を絶った。このホンダの致命的な方針決定であったように思います。
話はずれますが、現代の日本の政界と同様かと思います。
安倍、麻生元首相も、当初は高い志を持っていました。
インフレターゲットは2%まで、手段を選ばず景気を底上げする。国民を豊かにする。
当初は心からそう思っていたのでしょう。
しかしそれは叶わず、両首相とも辞任しました。
それはなぜか。やはり「空気」だと思います。
永田町の空気はもちろん知るよしもなく想像ではあるのですが、基本的にお金には困った経験のない人たち。
それと同じで、ホンダのような大企業も、一度勤めてしまうと体制に巻き込まれていきます。